ワーママモンスターとの戦いファイナル
入社直後に、育児を理由に面接時に約束していた業務量の削減を要求。他人より少ない業務量でも成果を上げられなければ、家族のケアをしなければならない自分は特別だというロジックを展開。他方で、同僚が家庭の事情を理由にすることに対してはプロフェッショナリズムが欠如していると批判する。上司と人事担当者を悩まし続けている有名企業で働くワーママモンスターHさんを取り上げてきました。
前回、わがまま全開ワーママモンスターHさんも、ついに業績改善プログラム(PIP: Performance Improvement Program)に指名されたことをお伝えしました。
「PIPに指名される=業績を上げていない」ということを意味します。そのため、先月の夏のボーナスでは、業績に連動した変動給は期待できないのは容易に想像できることは言うまでもありません。今では、日本企業でも業績連動ボーナスは身近な制度となりましたが、外資系企業になると、その変動額はかなり大きくなります。
ワーママモンスターHさんの勤める企業の場合、PIPに指名されるとこの変動部分はゼロになるそうです。Hさん、この事実を知るや否や、いつものように自分勝手な屁理屈を主張し、評価が不当であること、そして評価を下した上司や人事を社内で大々的に批判し始めたそうです。
とはいえ、上司や人事だけではなく、同僚からも、Hさんに対する評価はとても低いことは言うまでもありません。自分の味方は周りにいないことに気づいたHさん、今度は、経理のような業務上全然関係のない部門の長やコンプライアンス部門などに、「自分の上司はパワハラの常習犯である」、「人事もグルである」、「自分はハメられた被害者である」というようなことを社内のあらゆる部門で言いふらして回っていたそうです。
こうなると、被害者なのはむしろ上司や人事の方です。ですが、上司や人事の方が何枚も上手でした。Hさんとの会話は全て記録されており、語りかける文言も細心の注意を払われていました。一方記録されていることを知らないHさんは、支離滅裂、筋の通らないわがままを思いつくままに主張しており、どちらの主張が真っ当であるかは明らかでした。
追い詰められたHさん。その行動は日増しに酷くなっていきます。もはや法的措置に訴えるしかないと人事は判断し、ある日、このまま迷惑行為を続けるようであれば、名誉毀損で訴える旨、本人に通告したそうです。
これまで自分が正しいと思い込み、言いたい放題やりたい放題だったHさん。まさか自分が法的に会社から訴えられるとは思っていませんでした。あまりにも衝撃だったのでしょうか。通告を受けた翌週に月曜の朝に、上司宛に突然退職届を提出してきたそうです。
あまりに突然のことで、上司も人事も驚きを隠せなかったものの、企業組織にとって不要な人材が自ら退職すると言ってきたのですから、安堵したのは言うまでもありません。
とはいえ、すんなりと退職届を受け取るわけにはいきません。Hさんのような人物の場合、退職した後に「引き止めがなかった。会社に意図的にハメられた」と言って難癖をつけて来ることがよくあります。「退職したい」、「決意は変わらない」とHさん自らの言葉を声に出させ、撤回できないように会話をコントロールしていきながら、もはや決意が固まり覆さないであろう適切な段階で、あえて引き止めるフリをします。引き止めたという事実を作る必要があるからです。
私も、半年以上にわたってHさんと上司や人事の戦いを伺ってきましたが、このような、モンスター従業員と経営サイドとの戦いは、Hさんのケースが稀というわけではありません。
従業員に与えられた権利に対して、業績で企業や組織に貢献するという前提を忘れ、インターネットを通じて仕入れた従業員としての権利ばかりを振りかざす、モンスター従業員やワーママは本当に信じられないほど多いのが実情です。
この企業はHさんとの戦いを無事、自発的な退職という形で終結することができました。とはいえ、Hさん以外にもモンスターはまだまだいると言います。企業にとって、モンスターを一人駆除しても、次から次へ生まれてくる。もはや現代の経営上のリスクの一つであると言わざるを得ないのが企業の本音ではないでしょうか?