入社式直前、入社を辞退した人
新年度も2週目に入り、新体制の元、いろいろなことが本格的に動き始めているのではないでしょうか?新社会人も、新入社員集合研修を終え、さっそく各部門に配属された人もいれば、引き続き生産現場などでの実習を開始した人など様々でしょう。
しかし、その新社会人の中には、新入社員として企業に入社するつもりでいながら、土壇場の3月の末になって、その企業方針に従うことができず入社を辞退した人もいます。
一流大学の就活生の中でも人気の某企業に、コンサルタントとして入社する予定になっていたAさんは、その一人です。就職活動の準備を相当早くから開始し、求められるビジネススキルや関係する資格の習得、面接対策、色々な世代の先輩社員との面談を通じた情報収集など徹底的に準備をし、無事本命企業への内定を獲得しました。
内定後も手綱を緩めることなく、同期から抜きんでるために短期語学留学に行ったりと充実した毎日を過ごしていました。しかし2月後半のある日、内定先の企業から呼び出しがかかります。内容は、「入社後のキャリアプランの相談」と言いいます。何の疑いもなくオフィスに出向きましたが、人事担当者からの説明を聞いて一瞬にして凍りつきました。
説明された内容とは、企業の事業戦略が変わり、希望していたコンサルタントへの配属枠がなくなり、ビジネス開発(という名の営業)の枠しかないというのです。
話が違うと必死に訴えるも、こないだまで良き社会人の先輩のように接してくれていた人事担当者は、まるで別人のようで、表情を一切変えることなく、決定事項だといって聞く耳を持ってくれません。内定を勝ち取るまでの努力を考えるとAさんにとって営業という選択肢はありません。かといって、2月の後半から新年度までの一カ月で他の企業に入社できるわけがありません。
その日、同じような宣告を受けた同期が多数おり、同期入社のSNSコミュニティーは大炎上していました。希望ではない職種でとりあえず入社し、第二新卒として転職活動をするというものが大多数でしたが、すでにこの企業を信用するどころか、嫌悪感を感じていたAさんは、その他大勢の同期とは違い、どこにも入社せず、まずは短期留学をしつつ英語力を磨き、学士入学編入や大学院入学含む海外大留学を目指す戦略を取ることにしたのです。
Aさんは、様々な業種のいろいろな世代の先輩方に話を聞いていました。そして、日本企業、外資系問わず、英語が話せない日本人が多い、日本の人材マーケットにおいて、海外大出身者がいかに過大評価されていることを理解していたからです。そこで、たとえ社会に出ることが数年遅れても、十分挽回可能だと判断したからです。
株式会社である以上、株主の利益のためであれば、戦略を急きょ変更することがあります。すべては株主第一です。従業員のため、入社予定や新入社員の希望を株主よりも優先することがないのは当然です。
このことを理解していたAさんは、状況を受け入れ、他人と違う戦略を取ることにしたのです。しかし、この戦略は誰かが保証してくれるものではありません。すべては自己責任です。留学している間に景気が悪化し売り手市場から買い手市場になることも予想されます。それでも、自分で戦略を決め、次のステップに踏み出したAさんの行動力を評価し、応援したいと思います。