自分ブランドの磨き方ブログ

MBA、コンサル、本当に自分に必要?今の自分のブランド力で何ができるのか? 何を準備すべきなのか? 私自身の経験やさまざまな人たちとの交流を通じて、気づきなどをシェアして行きます

辞めた企業に出戻れる人、お断りな人

それまで勤めた会社を退職し、再びその会社に入社することを「出戻り」と言われます。出戻るパターンは人それぞれですが、新たな環境にチャレンジし活躍しており、優秀であるが故に元の所属企業から頼まれて出戻るパターンや、自らの勝手な事情で退職しておきながら上手くいかず、前の方がよかったので戻りたいパターンなどが考えられます。いずれのパターンでも、一昔前の宗教的家族主義の大手日本企業では考えられないことでした。それは、一度退職したものは裏切り者扱いされ、出戻るなどということは許されないことだったからです。ところが日本企業でも、大手では富士通がカムバック制度を導入したりと、有効活用できているかどうかは別にして、時代は変わりつつあります。

 

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いずれのパターンでも、元の所属企業に戻れるのは元々能力が高く、組織やリーダが戻ってきてほしい人材であることが大前提であるということは言うまでもありません。

 

実際、あまり一般社員には知られていませんが、企業の人事管理システムの管理職向けメニューには、退職者が将来出戻りを希望した場合に再雇用してもよいかチェックボックス設けられていることがあるのです。もちろんそのような仕組みがない会社でも、在籍時のパフォーマンスを考慮して、適切な人材でなければ採用さされることはまずありません。

 

今日は、自らの勝手な事情で退職しておきながら、転職先で上手くいかず、前の会社に戻りたくて仕方ないのに、進め方を間違えたことで復帰のチャンスを逃してしまったSさんのお話です。

 

ある外資系企業に勤めていた40代後半のSさん。Sさんはその企業の勤務年数が長かったため、皆からそれなりに慕われていたそうですが、いざ仕事になると数字に弱く、資料を作れば誤字脱字も多く、何かにつけて雑な仕事が多かったため、上司だけでなく関連部門からの評価は低かったそうです。そんな周囲の評価と異なり、Sさん自身の自己評価は、上司が退職した際には、次は自分が昇進する番だと思っていたほど自己評価が高かったというから驚きです。

 

そんなある日、上司が他社に転職するということが発表されたそうです。自己評価の高いSさんはいよいよ自分がマネージャーになる日が来たと他人が見ても張り切っていたそうです。ところが待てども待てども、上司の上司である本部長Mさんや役員達から自分にそんなオファーがありません。そうしているうちに本部長Mさんから後任のマネージャーは外部からやってくることが発表されたのでした。

 

なぜ自分をマネージャーにしてくれないのか?後任のマネージャーUさんが着任してからも面白くない日々を過ごしていたSさんは、着任したばかりのUさんが数年後にキャリアアップを果たし再びポジションが空くことに賭けるよりも、知り合いがすでに働いていた他の外資系に、今より給料が上がることに釣られて転職してしまったのです。

 

Sさんに声をかけた知り合いも、プライドと自己評価が高く、ろくに実務もできないSさんを買いかぶり過ぎていたこと気づき、二人の関係は半年もしないうちに関係は悪化します。加えて周囲も仕事のできないSさんとの距離を起き始めたのでした。

 

『前の会社であれば勝手はわかっている。』、『それなりの仕事はこなせる。』、『みんなのことは知っているので、ちょっと失敗しても許される。』、なんとしても戻りたいと考えたSさんは、早速行動に移したのでした。しかし、ここで決定的なミスを犯してしまいます。

 

まず、上司だったUさんやその上司の本部長Mさんといった直属ではなく、仲の良かった同僚経由でラインの違う営業の役員Zさんにコンタクトしてしまいます。Sさんは役員Zさん経由でUさんやMさんに復帰をお願いすれば、Zさんの息がかかったSさんを採用しなければならないという忖度が働くと期待したようです。さらに入社後も簡単にクビにはされないだろうという浅はかな計算もしていたのでした。ですが、いくら役員とはいえ、部門異なると採用についての権限はなかったのでした。

 

二つ目は、給与について欲をかいてしまったのでした。Zさんにお願いする際にSさんは「皆が戻ってこいというので復帰を考えている。本部長のMさんに口を聞いてきいてもらえませんか」と打診したのですが、「元同僚達に戻って来てほしい頼まれるので仕方なく戻ることを考えている。そのため今の会社に転職した際に上がった給与で採用してほしい」と言い出す始末。通常数ヶ月程度で出戻る場合、在籍した時の給与がそのまま適用されることが多いのです。仮に数カ月の他社経験を評価するにしても、短すぎるだけではなく、転職先でのSさんの評価は使い物にならないという評価だったくらいですから、プレミアムを払ってまで採用する理由はありません。

 

その結果、役員Zさんから相談された元所属部門の上司Uさん、その上司のMさんは、「他の候補者と公平に比較検討してベストな人材を採用したいと思います」とやんわり断られてしまいます。自らの戦略が間違いだったと気づいていないのか、役員Zさん経由でダメなら、今度は社長に会って直談判しようとコンタクトを試みます。もうここまでくると、「皆が戻ってこいというから戻ってやってもいい」というセリフは嘘だとバレバレです。社長もパフォーマンスの低かったSさんを会社として採用するメリットのなさを理解していることに加え、自分がSさんの肩を持ち巻き込まれることを嫌ったのか、元所属部門の判断に任せると面談を断り続けているそうです。

 

現在は景気がよく40代でも50代でも転職しやすい環境です。不幸にも、転職先でうまく行かず、以前勤めた企業に出戻りする際には、作法と謙虚さが必要なのです。Sさんは能力の高くありませんでしたが、仮に高かったなら、やり方次第では復帰の機会を得ることができたのかもしれません。

 

ただ、後日Uさんに聞くと、アプローチがどうであれ、能力の低く辞めて欲しかったSさんをチームに復帰させることは、全力で阻止していたということでした・・・。こうならないように日々精進しましょう。