自分ブランドの磨き方ブログ

MBA、コンサル、本当に自分に必要?今の自分のブランド力で何ができるのか? 何を準備すべきなのか? 私自身の経験やさまざまな人たちとの交流を通じて、気づきなどをシェアして行きます

カムバック制度採用って

失われた20年の間に新卒採用の抑制などにより、従業員の年齢構成構成がいびつになり、団塊の世代が大量定年を迎える2012年問題が叫ばれてから4年。各社迫りくる労働力不足を補うために、転職などで退職した従業員を再雇用するカムバック制度をしはじめニュースに取り上げられています。
 
実際、求人情報サイトを運営するエンジャパンの出戻り社員(再雇用)実態調査によると72%の人事の方が「(再雇用したことが)ある」と回答し、その理由として「即戦力を求めていたから」(39%)、「人となりが既に分かっているため安心だから」(38%)の2つが多数を占めたそうです。
 

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(エン・ジャパン株式会社 出戻り社員(再雇用)実態調査より)
 
こうして見るとかなり浸透しているように見える再雇用制度ですが、メインターゲットは35歳以下の退職者で、40歳以上の中高年を企業は欲していないかもしれません。カムバック制度を利用して、前職応募した中高年、企業人事の双方から話を聞いていますが、採用に至った方はまだいません。
 
MBA留学予備校時代の知人のAさんは、このカムバック制度を通じて前職に応募した1人です。Aさんは、当時大手メーカーに勤めており、その企業が会社費用で派遣する制度を使わず、自費でのMBA留学を選択肢、企業は留学による休職を認めていなかったため、やむなく退職したのでした。無事MBAを取得し、卒業後の就職先として外資系企業のマーケティング職を選択しました。その外資系企業での日々は、マーケティングに対する知識や活用、そしてマーケティングによるパフォーマンスへの執着など、前職の日本企業とは180度異なるギャップに毎日刺激を受けながらも、ノウハウを吸収しプロジェクトをリードするなど活躍していました。
 
そこに前職の企業が再雇用制度導入のニュースを知ります。自分が外資系企業で得た知見を前職で活かせないか?元々辞めたくて辞めた会社ではなかったため、40歳を過ぎて年収が下がることも覚悟の上で応募したそうです。
 
しかし結果は・・・、定型文によるお断りメール。しかも応募から2ヶ月以上も経った忘れたころに届いたと言います。普通なら落ち込みそうですが、前職人事の意思決定のあまりの動きの遅さと今の自分のスピード感の違いに、自分は前職ではオーバースペックだと見切りがついたそうです。
 
Aさんがお断りという結果になった理由は闇の中ですが、日本企業は中高年の採用には及び腰です。経済学者のラジアーの人的資本理論では
 
労働者の努力水準を使用者が直接観察できない場合に、若年期には生産性以下の賃金を支払い、企業が潰れず業績が好調であれば、中高年期に生産性以上の賃金を支払う賃金体系によって、労働者のインセンティブを維持できると指摘した。
 
つまり、若い間に安い給料で奉公し、中高年になったら高給で返してもらうという体系です。低賃金で企業に奉仕する若年時代を他社で過ごした転職希望者は、企業にとっては、借りがないのに高給を支払う必要があり、採用する動機がないと言われています。また、一度企業を離れた裏切り者に、中高年の限られたポストを与えてよいものかという葛藤もあるようです。
 
海外、特にアメリカでは年齢による就職差別が違法の国では、年齢や人種など記載せず、レジュメに記載された経歴と実績だけで評価し、人材を活かしている国が多数あります。その海外から自分達に都合のいい部分だけを輸入して日本語に翻訳した経営理論を実践してみても、グローバル企業との差は開くばかりではないでしょうか?Aさんのような優秀な人材が、前職のことを想い、応募してきた。このチャンスを活かせない日本企業が残念で仕方ありません。