自分ブランドの磨き方ブログ

MBA、コンサル、本当に自分に必要?今の自分のブランド力で何ができるのか? 何を準備すべきなのか? 私自身の経験やさまざまな人たちとの交流を通じて、気づきなどをシェアして行きます

出世するリスク 出世しない幸せ

6月に入りました。梅雨とは無縁の天気が続きますが、梅雨の季節だけではなく、日本のビジネス界において6月は株主総会の多い大切な月でもあります。そのため、組織の改編や人事異動の季節でもあり、出世を意識しているビジネスパーソンにとって心穏やかではない月でもあります。

 

そもそも出世とは、「世間に出て、人に知られるよい地位・身分になること」という意味に加えて、社会的地位責任の向上、その責任の対価として経済的な豊かさを手に入れるという意味も含蓄しています。だからこそ皆、出世を目指すのではないでしょうか?

 

しかし、その対価を手に入れる一方で、政治的な争いや責任重さからくるストレスなどにさらされる負の側面も覚悟しなければなりません。

 

先月末、とある外資系企業で部長を務めていたTさんから5月末を持って退職すると連絡をいただきました。彼は、持ち前の明るさで皆から慕われ、何かあると率先して取り組む兄貴肌のタイプで、社内でも有名人でした。しかし、最近は社内の政治に巻き込まれ、組織変更のタイミングで今のポジションを剥ぎ取られたことで退職を決意したそうです。

 

対照的にTさんの会社には、Tさんと同世代でありながら役職もなく、誰よりも遅く出勤し、誰よりも早く昼食のため社員食堂に向かい、誰よりも長く昼食を取り、定時で会社を去るという社員が多くいることでも知られています。彼らは、リストラ宣告の危機をかわし続け、退職に追い込まれることなく、驚くことに定年まで勤め上げ、高年齢者雇用推進法にて義務付けられた再雇用制度で、その会社で働き続けることを目標にしています。

 

では、組織の最前線で活躍し50で会社を去ることになったTさんと、組織に埋もれ、目立たないながらも定年まで平社員で居続けるため会社にしがみ付くこと、どちらが幸せなのでしょうか?

 

まず、経済的な面で見てみましょう。

 

平成19年賃金構造基本統計調査

 

にて報告されているように、大企業であれば、45歳過ぎたあたりで年収1000万円に到達します。ですが、あくまで平均値であり、部長職のTさんと、平社員の給与では、大きく異なります。そこで、

 

・仮にTさんの直近年収を1400万円、平社員の年収を750万(中規模企業と同等)

・Tさんが50歳で退職し働かず、以後収入がない、

・平社員が65歳まで継続雇用されること

 

を前提とした場合の年収差をシュミレーションしてみると、Tさん281百万円に対し、平社員271百万円その差はたった1000万円程度しかないのです(シュミレーション詳細は割愛)

 

また、上記生涯年収に加えて忘れてならないのが、年金や社会保障です。50歳で退職することで、以前ほどではなくなりましたが、それでも国民年金よりははるかに充実している企業年金の恩恵を受けることができなくなります。

 

これら経済的な側面に加え、在職中に降りかかる心身へのストレスは、経営陣から落ちてくる厳しいプレッシャーにさらされることに比べると、平社員のものは軽いものといえるでしょう(個人の受け取り方にも依存しますが)

 

さらに、上記生涯年収の分析では、Tさんが50歳で退職以降働かないと仮定しましたが、働く意思がある場合には、どのようなことが考えられるでしょうか?再就職の観点からみると、前職で管理職など高い地位にあったビジネスパーソンの転職は容易なものではありません。

 

mid-tenshoku.com

エンジャパンによる、2017年の転職市場予測「ミドル人材の求人動向」を見ると、「35歳ではなく、45歳がプレイングマネジャーに求められるガラスの天井」と明記されているように、35歳転職上限説は10歳も上昇しているものの、50代を迎える人材にとってはマーケットの評価はそれほど変化していないことがわかります。

 

前職が部長職で年収1400万~1500万円を得ていたような場合、ますます求人は限られてしまいます。だからといって、応募する側もこれまでの年収水準を落とすことはなかなかしずらいという事情もあります。

 

ここまで見てみると、ぶら下がり平社員が、最良の戦略のように思えます。実際、とあるマーケティング・リサーチ会社が実施した「若手社員の出世・昇進意識に関する調査」30代の調査では、出世してもどうせ報われないから出世しなくていいという30代が増加しているとか。

 

所属企業、自分のチームどう貢献して、どうしたら成果を上げることができるか考えていたTさん。自分のためだけに会社や社会にぶら下がる生き方を選ぶか、損得以外にも考慮すべき点はたくさんあると思います。この問題ももう少し追い続けていきたいと思います。

 

Tさん、おつかれさまでした。