自分ブランドの磨き方ブログ

MBA、コンサル、本当に自分に必要?今の自分のブランド力で何ができるのか? 何を準備すべきなのか? 私自身の経験やさまざまな人たちとの交流を通じて、気づきなどをシェアして行きます

権力者の後ろ盾

労働力不足が報じられ、中高年の求人も多くなり、これまで転職サービス業界でささやかれていた『35歳限界説』が、もはや崩壊と言われていること、そして労働の需要が増えたイコール転職しやすくなったわけではなく、いままで以上に選別は厳しくなっていることをお話しました。

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そして、採用企業は事務処理だけで、コンサルタントとは名ばかりのヘッドハンターに、年収の30%を成果報酬として支払うことに疑問を感じ始め、LinkedInなどによるダイレクトリクルーティング(直接採用)や、従業員の紹介を通じた採用にシフトしつつあることもお話しました。

 

従業員の紹介を通じた転職は、採用を担当する人事にしてみれば、自社に入社し活躍している社員の紹介であれば、下手なヘッドハンターの紹介よりもずっと優秀である可能性が高い、そして入社の意思が高く、他社にも応募しており逃げられるというリスクが低いと考えられているそうです。

 

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一方、転職希望者にしてみても、一足先にその企業で働いている知り合いの従業員の情報を通じて、その企業がどのような社風で、どういう風に仕事を進めるのか、給与含めた報酬や、社内政治などの内部情報が入手でき、事前に準備できるというメリットがあります。

 

その、従業員紹介による転職の究極の形があります。そう、それは、社長自らによる紹介(ヘッドハンティング)です。社長の前職の部下や同僚を自分が社長を務める企業に引っ張るというアレです。社長自ら声かけして応募してきているわけですから、落ちる選考の過程で確率はかなり低いと言えます。外資系ですと、日本法人の社長面接は形式的に実施し、本国本社とエグゼクティブとの面接がセットされますが、世界の常識が通用しない国、日本を切り盛りするトップ自らのお墨付きの候補者を落とすということはあまり聞いたことはありません(あまりにひどいと、落ちることもあります)

 

知人のTさんは、前職の上司が社長を務める企業に、役員として来ないかと誘われて入社しました。元上司である社長には、前職時代にかわいがってもらっていましたが、社長は特別扱いをするわけではなく、むしろ、Tさんに対してパワハラ級に厳しく接していました。罵声を浴びせられることも多々ありましたが、食らいついていくTさんの姿勢が買われていたようです。

 

誘われて入社した企業では、一事業部門を取り仕切る執行役員として入社しますが、なかなか業績を上げることができません。昔のようにののしられ、罵声を浴びることはなれているはずでしたが、部門を任せられたプレッシャーが加わり、Tさんはうつになってしまいます。

 

うつになってしまったことで責務を全うできなくなったTさんですが、数か月休養の後、業務に復帰します。復帰早々新たに受けた事例は、”担当”執行役員という肩書です。

 

どこの企業でも、財務担当取締役、北米担当執行役員という風に、担当責務を表す意味で担当という言葉が使われます。ところが、Tさんの”担当”の意味は、ヒラの担当の意味だったのです。そうです、Tさんは、あるお客様(それほど重要ではない)を担当する営業担当としての業務をアサインされたのでした。

 

しかし、業務内容は入社5年目の若手と同じヒラ担当業務なのですが、これまでの社内資格等級や給与は執行役員時代のまま!という待遇だったのです。社長の温情が働いていたのは言うまでもありません。

 

そのため、社内では創業以来もっとも高給取りのヒラ営業として、陰口を言われるようになりました。しかしTさんは、気にしません。なぜならこれといった成果を上げることができなかった今、執行役員、事業部門長レベルで、次のポジションを探すことは、ほぼ不可能だと分かっていたからです。このまま社長が会社トップに座ってるいる限り、しがみついて行こう考えていたそうです。

 

ところが、その後、社長が引退を発表してしまいます。そうなると、周囲の対応が一転します。これまでとは違い、明らかな冷たい視線や、あからさまな嫌がらせや口撃が降り注ぐようになったのです。

 

こうならないためにも、権力のある人、採用権限のある人の紹介で転職する場合、自分を引っ張ってくれた人々がいなくなった際のリスクをよく検討し、準備しておく必要があります。具体的には自分がその人の派閥の人ではなく、皆と良好な関係を築くなどが必要です。また、転職を決断する際には、権力者の後ろ盾がいつまで続くのか見通しをたて、その後のプランまで立てておく必要があります。

 

残念ながらTさんは、これを怠っていました。そして、業界内では、自分のことは知れわたっているのではないか?そして、自分を採用してくれる企業はないのではないか?という不安で再びうつの悪化に苦しんでいるのです。