自分ブランドの磨き方ブログ

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「高齢者」の定義引き上げと我々の雇用への副作用

昨年末、内閣府が「高齢者」の定義を70歳以上に引き上げるよう提案するというニュースがありました。年が明けても、70歳以上引き上げの影響について、週刊誌をはじめ様々なメディアで取り上げられていることから、このニュースのインパクトの大きさがうかがえます。

www.nikkei.com

その提案の詳細ですが、昨年12/20の日本経済新聞によると、

 

高齢者の定義を70歳以上に引き上げることも提案。定年延長や、医療や介護サービスで、高所得の高齢者の負担を増やすといった施策を想定。0~30代が約2割減ることで働き手が不足し、成長の制約となる懸念を示した。働く人を増やし、日本全体で現在と同じ6割の人が就労する仕組みを構築。

 

というもの。現状はどうなのかというと、現在は65歳以上と定義されており、平成28年版高齢白書によると、2015年10月1日時点で日本の総人口の26.7%(4人に1人)が高齢者です。

 

平成28年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府

 

今のままの定義で高齢化が進むと、高齢者人口はどんどん増加していくことになり、逆に生産年齢人口の減少や税収減を通じて、年金や医療などの社会保障費負担の増加に耐えられないことなります。が、一方でこのように定義上高齢者であっても、我々の周りを見渡すと、元気な高齢者も多いのではないでしょうか。

 

慶應大学の清家教授の高年齢者就業の経済学(日本経済新聞出版社)によれば、実は日本はOECD先進国の中で高齢者の働く意欲がダントツに高い国だといいます。政府は、高齢化し成熟する経済の中で高齢者を労働力として活用し、高齢者に社会保障の財源の消費者から、納税を通じて供給者になってもらいたいという考えのようです。

 

では、この高齢者の労働力活用という政策の結果、どのような副作用がもたらされるのでしょうか?懸念されているのが、高齢者の対極にある若者の雇用についてです。具体的には高齢者の雇用が若者の雇用を奪うのではないかと言われています。実際にこの分野を扱う労働経済学研究は多く、計量経済学統計学)を用いた分析結果では、高齢者雇用は若者の雇用を奪うことが統計的に実証されています。

 

これまで社会問題としてニート非正規雇用といった問題が多く取り上げられていることから、高齢者雇用の対極として若者をテーマにした研究は多く存在します。高年齢者雇用の受け皿が単純作業など熟練度を求められない雇用が多いことから、比較的熟練度を求めない若者雇用の代替との関連が想定されることから自然な流れなのかもしれません。

 

そのため、働き盛りで財源の供給者である我々ミドル世代の雇用を奪わないかという研究はほとんど存在していないようです。高齢者雇用が労働力の主力であるミドルの雇用にどのような影響をもたらしているのか?今回の高齢者の定義が変わることで、雇用のみならず、専門性含めた雇用の質にどのような影響を及ぼすのか?実は社会保障を支える屋台骨であるミドルの雇用への影響についても、キャリアの視点で引き続きレポートしていきたいと思います。