解雇と訴訟
先日、うつが原因で解雇され、解雇に対する賠償額の裁判の報道がありました。
うつ理由解雇の差し戻し審、東芝に6千万円賠償命令:朝日新聞デジタル
病気を患いながら戦われた原告の方は、今はほっとされていることと思います。この判決が今後の労働市場にどう影響があるのか関心がありますが、同時に、私が外資系企業で働き始めたころ、先輩に言われた真逆の一言を思い出しました。
それは、
「法律が守ってくれない」
という一言。
すぐに成果の求められる外資系企業で、やる気はあっても、成績が供なってくるにはそれなりに時間はかかります。成果を上げることができず解雇される同期や同僚は後を絶たず、中には会社を相手に裁判を起こした例も多数ありました。
その中に、高い目標を設定され、プレッシャーに耐えきれず、うつになってしまった同僚のNさんがいました。Nさんは、うつであることを会社に告げたのですが、治療中であることを考慮してもその期間の業績が著しく低いと判断され、業績改善プログラム(PIP:Performance Improvement Programといいます)に指名されてしまいました。最終的に、Nさんは、会社を相手取って訴訟を起こし、約2年間戦い続けた後、和解に至り、割増退職金を手にし会社を去ります。
この言葉は、その時に先輩から言われたものです。最初は何を意味するか理解できませんでしたし、先 輩もその意味するところを教えてくれなかったのです。それから1年半年ほどたったある日、たまたまNさんの話題になったのですが、予想とは反するNさんの近況を聞くことになります。Nさんは退職から現在に至るまで、ずっと無職だというのです。
聞くと、訴訟に勝ったり、和解に至っても、その行為だけではなく、結局会社に楯突く人材として業界内で知れ渡ってしまい、再就職が困難になってしまっていたというのです。取引先、同業他社すべてが、Nさんの退職に至るまでの詳細すべてを把握していたのです。噂の広まっていない他業界にキャリアチェンジする準備をしてわけでもなく、貯金も底をついてしまい、Nさんの病状はますます悪化し、外出も困難という現状に耳を疑いました。