自分ブランドの磨き方ブログ

MBA、コンサル、本当に自分に必要?今の自分のブランド力で何ができるのか? 何を準備すべきなのか? 私自身の経験やさまざまな人たちとの交流を通じて、気づきなどをシェアして行きます

銀行員は引く手あまたという誤解

このところ銀行、特に大手3行のリストラに関するニュースを見ない日はありません。連日のように銀行員であることが悲哀という趣旨のニュースばかり。

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バブル期には多数あった都市銀行も、バブル崩壊リーマンショックを経て、今や3大メガバンクにまで統合されました。リーマンショック後の2010年には3行は再び就職人気企業に戻り、銀行=エリート、安泰のイメージを取り戻したと思っていたのですが....一体何があったのでしょうか?

 

日銀のマイナス金利導入で収益が挙げられなくなったとか、AIや機械化で人がいらなくなり大幅削減しなければ生き残れないというのがその理由です。

 

パーソルキャリアが運営する転職サイト「DODAデューダ)」の大浦征也編集長によれば、「メガバンク出身者は転職マーケットでは概して人気だ」といいます(出展:AERA 2018年1月22日号より)

 

また、みずほフィナンシャルグループ(FG)の佐藤康博社長は日刊工業新聞社のインタビューにおいて、人材マーケットに放出される自行の1万9000人の人員削減計画に伴って転出する人材について「財務や経営が分かる人材のニーズが予想以上に多い」として活躍できると自信を見せています。

 

このように、銀行員としての財務や経営の知識が中小企業やベンチャー企業の経営に活かせるとポジティブな意見もあるのですが、一方で懐疑的な意見が多いのも事実です。財務や経営のわかる銀行員と言っても、マニュアルに従った処理しかできないただの営業マンに過ぎないという意見、長年日本の銀行の常識に染まった人材が、世の中の常識やビジネスの変化のスピートについていけないという意見などがあります。

 

世間の常識や変化のスピードついていけないというのは、私も知人のY氏の経験を傍で見ていて、納得せざるを得ません。Y氏は東大を卒業後、当時の上位都市銀行に入行します。入行時から銀行の非効率さ、自分以外の一般行員が言われたことしかできない意思のなさ、能力の低さに辟易して、このままではいけないと、退路を絶って銀行を退職し、海外でMBAを取得しました。MBA取得後は、銀行への未練などなく、自分の能力が最大限活かせると戦略コンサルティングファームに就職します。

 

ところが、何もかもが描いた通りのシナリオとスケジュールで進んでいると思っていたY氏の人生の歯車が狂い始めます。MBA取得後入社した戦略コンサルティングファームは、クライアントへの期待に応えるため連日徹夜で働くスピード感にまず驚かされます。そして何よりも自分のバックグラウンドで自信のあった銀行員時代の経験は、ほとんど役に立たず、年下の新卒入社の先輩コンサルタントに、バカにされる日々を過ごさなければならないことは屈辱以外の何物でもありませんでした。

 

自分はグローバル基準のビジネスには向かないのか?ただの日本企業の社員に過ぎなかったのか?と後悔する日々を過ごします。そして耐えられなくなったY氏は、再び居心地の良かった日本の銀行へ転職活動を開始したのです。

 

銀行での自分の専門知識や経験が役に立たないことを理解していたので、コンサルティングファームでのプロジェクトでの経験を全面に押し出す戦略を取り、転職を開始してまもなく別の大手都市銀行の専門部署から内定を獲得します。ちょうど戦略コンサルティングファーム入社後4ヶ月目にさしかかろうかという時期でした。

 

再び日本の銀行の社員となったY氏は、戦略コンサルティングファームをいたるところでブラックと呼び、霞ヶ関の中央省庁の顔色を伺い、働き方改革やプレミアムフライデーなどの制度を、行内で無理やり推進する今の銀行をホワイト企業と呼んでいます。これまで、日本の銀行の企業としての主体性のなさ、働く行員の社畜具合を自ら批判していたことは、もう記憶にはありません。

 

とはいえ、大手行とはいえ日本の銀行ですから、外資の買収など、いつ今のホワイトな生ぬるい生活が脅かされるかわかりません。

 

前職の銀行の支店で融資に従事する同期の業務が、何も専門性がないこともわかっています。人材マーケットに挙がる金融求人は専門分野ばかりだということは、すでに転職を経験しているY氏は十分理解しています。

 

今は、グローバルビジネスの変化のスピードも大切だが、今は銀行の論理を重視し、上から言われたことしかできない上司の命令には従い、今の部署から追い出されないようにすることがキャリア戦略上最も重要だと言います。営業部門に異動したら最後、専門知識の習得どころか、いざという時に転職ができないからだそうです。

 

今の自分の立場やキャリアとMBAを目指したころの志のギャップについて、Y氏に聞いてみたところ、志を捨ててしまった自分に何の罪悪感も感じないそうです。もはや、エリートの代名詞だった銀行員は、ヘッドハンターや銀行トップが思っているイメージとは変わってしまったのかもしれません。