自分ブランドの磨き方ブログ

MBA、コンサル、本当に自分に必要?今の自分のブランド力で何ができるのか? 何を準備すべきなのか? 私自身の経験やさまざまな人たちとの交流を通じて、気づきなどをシェアして行きます

中高年の転職は、NHKが言うほど簡単ではありません

内閣改造前後でのこれまでの内閣の実績を後押しするためなのか、衆議員解散の影響もあるのか、ここ最近、再び景気回復による求人や転職者数増加に関する記事がメディアを占めるようになってきました。 

ki44fukushima.hatenablog.com

 

特に40歳以上50歳代といったミドルをターゲットにした転職がホットだという記事が非常に多く、先日NHKでも次のような特集を放送したばかりです。 

www.nhk.or.jp

 

クローズアップ現代の本特集では、かつて転職市場でささやかれた「35歳の壁」はなくなり、かつてほとんど転職が不可能だと言われていた40代・50代の転職市場が活況だといいます。ある人材会社の調査によると、41歳以上の転職者は5年で2倍近くに急増という数字も掲げられています。

 

これだけ活況なミドルの転職につきものの転職後の給料面、採用面接での評価ポイントなどリアルな疑問に答えるというアプローチで”おじさん転職”の最前線に迫っています。そして、具体的な事例として大企業である森下仁丹の始めたユニークな中高年採用を取り上げています。

 

しかし、これまでお話してきたように、この手の番組には注意が必要なのは言うまでもありません。

 

引用記事では、220倍の難関を潜り抜け10人が内定を得、そのうち半数の5名が医薬品未経験者とあります。アメリカの有名大学でMBAを取っているような華々しい経歴などは重視せず、候補者のこれまでの人生観や経験重視で選考を行ったとあります。

 

ここまで見ていると、なるほど景気が回復し、年齢によるハードルも低くなり、経験が重視されるなら、転職しやすくなったんだなとミスリードを誘ってしまう内容です。

 

でも、この採用スタイルは、90年代にMINTIAをはじめミントにマーケットを席巻され多額の負債を抱え経営危機に直面し、外部から立て直しにやって来た社長による、ショック療法を経験した森下仁丹だからできるユニーク採用ではないしょうか?

 

私の知る限り、今だ大半の日本企業は、バブル期に大量に採用した40代後半から50代の社員を大量に抱え、いびつな社員年齢ピラミッドを、出向や転籍さらにはリストラ解雇を通じてどう修正していくか、頭を悩ましている企業が大半です。森下仁丹のように、”変革の時代を迎え新たなイノベーションの起爆剤となる人材を探して” 人生観や経験重視でさらに40代~50代を受け入れる余裕のある企業はありません。

 

さらに付け加えるとその人生観や経験重視の採用ですが、業界未経験者可の求人は、ブラック企業を除いてまるで見たことがありません。我々ビジネスパーソンになじみのある大企業や外資系企業では、未経験可どころか、ますますその業界特有の知識や際立った経験を求める傾向が加速しています。

 

特にマネージャー職ではなく、シニアスタッフ職(平社員)ポジションの求人場合、40代後半や50代になってなぜ平社員なのか?あえてプロフェッショナル職としてのキャリアを選んだ理由やスキルと経験が求められます。

 

これら経験を具体的にあぶり出すためにも、一般的な面接の質問だけではなく、先日取り上げたケースインタビューの形で、本当にどこまで知っているか、具体的な状況でどのような行動をとれるのか、問題が発生した場合どのような対処するのか、様々な能力を測定する企業も増えつつあります。

 

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特に経験については、大手日本企業にお勤めの中高年の方は注意が必要です。本当に多くて申し上げにくいのですが、自分の経験や能力を過剰に評価されている方が多いです。以前、「あなたは何ができますか?」という問いに「部長ならできます」という笑い話がありましたが、ケースインタビューで掘り下げてみると、具体的な部分が見えてこない。やってたことは典型的な日本の中間管理職の社内調整や社内政治ぐらいしか見えてこない方が、信じられないほど多いのです。

 

実際にこのクローズアップ現代をご覧になられた方もいると思います。40代・50代の転職が取り上げられることは良いことに違いありません。しかし、これなら自分も・・と思うのは危険です。このニュースは大衆に話題として提供したもので、一定レベル以上のビジネスパーソンには、参考程度にとどめておくのが得策だと言わざるを得ません。